足立区の民生児童委員、稲塚由美子さんが企画したドキュメンタリー映画「隣(とな)る人」が4年ぶりに再上映される。
「隣る人」は、親と暮らせない子どもたちと隣り合う保育士たち。そして、子どもと再び暮らすことを願う親の姿を撮った、ある児童養護施設の日常を追う8年間のドキュメンタリー映画。映画に登場する施設の子どもたちは本名で顔出ししている。
稲塚さんは「ミステリー評論家・ドキュメンタリー映像制作者」の肩書を持つ。「見えないものを見る」ことを信条に、ミステリー評論を続け、映画評も手掛けてきた。「一番見えづらいのが実は一般家庭の内部」と稲塚さんは話す。
「児童養護施設の実態を撮りに行っていた監督が『特殊な内情』を撮ろうとしていた。貴重な日々の『暮らし』の営みが、血縁関係にない児童養護施設の中にあった。そのことこそを撮ろうと決めたのが、企画者としての自身」と稲塚さんは同作制作のきっかけを明かす。
「誰も一人では生きられない」というテーマで、「あなたは、誰かにとっての『隣る人』になれますか」と上映後に問いかけてきた稲塚さん。若い母親たちの子育ての孤独を実感し上映後、話し込んだ。人と人との間合いの取り方など、高齢者をはじめ、若者や子どもたちとも語り合った。上映会を契機に、人と人をつなげることもしてきたという。
「いとおしい子どもといとおしい人たちの物語。人が人であるために、誰にでも『隣る人』が必要。血がつながっていてもいなくても、誰かが誰かに心を寄せよう。誰も一人では生きられないのだから。今こそ見てほしい映画」と鑑賞をを呼び掛ける。
上映は6月2日~15日、中野区内の「ポレポレ東中野」で行う。上映は12時30分~と20時40分~の2回。1回目の上映後には連日、トークイベント「私が受けとった『隣る人』の贈り物」を開催。初日には足立区のNPO法人「子育てパレット」代表の三浦りささん、6日には歌人の俵万智さんが登壇する。
料金は、大人12時30分~の回=1,700円、20時40分~の回=1,400円。両回共に、大・専門学生、シニア=1,200円、高・中学生、障害者=1,000円、小学生=700円、未就学児無料。子ども連れを歓迎しているため、希望があれば会場内を少し明るくするなど対応する。