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足立・新田のサービス付き高齢者向け住宅に若手アーティストが入居中

粘土を使った「お花作り」ワークショップの様子

粘土を使った「お花作り」ワークショップの様子

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 サービス付き高齢者向け住宅「そんぽの家 S 王子神谷」(足立区新田1)に現在、20代と30代のアーティスト2人が入居している。

「おとなのワークショップときどき子どものワークショップ」主催の講師とハーバリウムを作る

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 東京芸術大学とSOMPOケアが行う、アーティストと施設入居者がアートを通して交流することを目指した「アーティスト・イン・そんぽの家 S 王子神谷」の一環。入居するのは、同大とSOMPOホールディングスとの連携で展開する社会人と芸大生のための履修証明プログラム「Diversity on the Arts Project(通称=DOORプロジェクト)」の2017年度修了生。同プログラムを通して「アート×福祉」をテーマに「多様な人々が共生できる社会」を目指して学んできた。

 入居アーティストの一人である横田紗世さんは介護福祉士で、元々別の高齢者施設で働いていた。在職中には「忙しくて介護サービス以外のコミュニケーションはほとんど取れなかった」と言う一方で「介護士は利用者と近距離で頻繁に接することができる立場。仕事を通して、高齢者と自分の世代との『当たり前』の違いや、認知症の方との独特のやり取りなど、施設外での生活からは見えにくかった魅力も知った」。DOORプロジェクトでの学びを通して「現在の介護サービスでは補いにくい、そうした高齢者の面白さに着目した活動ができれば」との思いを強め同施設への入居を決めた。

 現在は施設1階の食堂の一角をカフェに見立て、コミュニティスペース「オウカミのス」を展開する。「部屋にこもりがちな施設住人の方々に、カフェに来るように気軽に集まって『常連さん』になってもらいたい。そうして施設内で顔見知りができたり、ご近所付き合いが増えたりすれば」と話す。入居者やその家族、近隣住民らと共同で企画して、音楽ライブ、詩の朗読会、ワークショップなどのイベントも月に5~7回程度行う。

 同大在学中の入居アーティスト、垣内晴さんは数回のイベントを横田さんと共に企画した。「イベントを通し、住人の方々だけでなく、企画者同士がさまざまな面で互いに学び合うことができるのが面白い」と話す。今月から新たに、ウェブを使って外部への発信を構想中だ。普段の生活の中で出会う、入居者の魅力的な言動や自分自身が感じたことなど、文字やイラストを通じて広く「お裾分けしたい」という。

 11月下旬には同スペースで、近隣でワークショップを主催するグループ「おとなのワークショップときどき子どものワークショップ」の担当者を講師に迎え、「ハーバリウム作り」のイベントを行った。参加した女性入居者は「とても楽しかった。花を選びながら入れてみたが、とてもきれいなものになった」とうれしそうに語る。

 「高齢者施設は近隣にとって『自分たちとは関係の薄い場所』と思われがち。今後は地域の方々にもスペースを利用してもらうなど、住人とご近所さんとが顔を合わせる機会をさらに増やしていきたい。そうすることで、異なる世代の間に生まれる『壁=共有できないもの』が、その人らしさを照らすポジティブなものとして、誰もが大切にできるようになれたらうれしい。私たちが退居する来年3月以降も、形を変えながら住人同士、住人とご近所さんとのお付き合いが続いてこと期待している」と2人は話す。

 入居期間は2018年5月から2019年3月まで。

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