美術家・友政麻理子さんの個展「美しい話」関連イベント「ハナデンシャで行こう」が6月16日、千住大橋で行われた。
「アートアクセスあだち 音まち千住の縁」のレジデントアーティストを務める友政さんが、自身の祖母との思い出を形にした個展「美しい話」。個展の軸となる「ハナデンシャ」は、友政さんと祖母が作り始めた紙花のロープのこと。
「祖母はいろいろな話を繰り返し長く話す人だった。祖母の話は、その度に改変され、どんどん美しくなっていった。そんな祖母の話を『美しい話』と呼んでいた。祖母は言いよどむことがあると、戦前に見た『花電車』が美しかった、みんなにも見せてあげたいという話をした。ハナデンシャは祖母が人生を眺める時に、そこに美しさを発見するための装置だったのかもしれない」と、ハナデンシャへの思いを友政さんは語る。
友政さんは祖母の話をとことん聞きながら、紙花のロープ「ハナデンシャ」を作った。「16年前の春、ハナデンシャがだいぶ長くなったので、私たちは家族でハナデンシャを外に持ち出して電車ごっこをした。今回の個展では、そのハナデンシャをもう一度作ることにした」と話す。
当日は友政さんと多くの人々が作ったハナデンシャが2カ所から出発し、千住大橋で2つのハナデンシャを連結させ、長いハナデンシャを作り電車ごっこを行った。
「仲町千住大橋ライン」は、仲町の家(足立区千住仲町)を15時30分に出発。ミリオン通りを走り、やっちゃ場緑道から千住大橋へ進んだ。「鬼子母神荒川ライン」は、個展が開催されているタリオンギャラリー(豊島区目白2)を13時40分に出発。鬼子母神前駅で都電荒川線に乗車し、三ノ輪橋駅から千住大橋まで進んだ。
ハナデンシャは千住大橋上で連結。「足立区と荒川区をつなげる千住大橋は歴史ある橋で、昔、都電が通っていたり対岸で綱引きが行われていたりした」との理由で、連結はこの場所が選ばれた。ハナデンシャの制作に関わったミュージシャンホセ寺田さんが作曲した「TAKE THE HANADENSHA」のリズムが、電車の足取りを盛り上げた。
「老若男女、大人も子どもも、見える者も見えない者も、さまざまな人を乗せて橋を渡るハナデンシャ。電車ごっこで初めて会う人々も顔なじみも、みんなで歩調スピードを作り、リズムを刻み、体を揺らしてハナデンシャで歩けた」と友政さんは話す。「祖母の昔話や、ハナデンシャを作ってきた誰かの思いを乗せて、ハナデンシャの歩む先に思いをはせて、みんなで運行したハナデンシャ。これからはまた、誰かの『美しい話』の中に走り続けてくれたら」と思いを語る。
当日の様子を記録した映像は、仲町の家にできた「音まち ミリオン座(茶室)」で7月22日まで上映している。