「千寿葱商 葱茂(ねぎしげ)」(足立区千住1)の公式キャラクターを、休校中の区内の児童が作った。
同店は日本で唯一、ネギだけを扱うネギ専門問屋「山柏青果市場」で、全国に6店しかないうちの1店。各農家が収穫した中で最も良いネギを、「厳しい修業」で経験を積んだ「葱商」が選定。このネギの目利きのプロが選んだのが「千寿葱」だ。
千寿葱は明治時代より「飛び切りあまくて煮崩れを起こさず、それでいて口に入れるととろけるネギがある」「薬味にすれば1本で他のネギの倍以上とれる」と評判になるほど、糖度が高く巻きが多いのが特徴。冬はメロンの糖度を超える、糖度18度になるという。その名は、東京中の鍋店、そば店、すき焼き店、焼き鳥店などネギを扱う料理職人に広まった。現在でも、都内にあるこれらの店の約8割で「千寿葱」が使われている。
しかし新型コロナウイルスは問屋にも影響が及ぶ。自粛要請により、卸先が営業することができなくなってしまったため、「千寿葱」の出荷も止まってしまった。休校のため学校給食もストップしてしまい、社長の安藤賢治さんも「頭を抱えた」と振り返る。
休校が明けた7月初旬、近所の学校に通い毎朝仕事中にあいさつを交わす小学生が「僕、葱茂さんのキャラクター作ったよ」と突然告げてきた。「おう、今度見せてごらん」と賢治さんは答えた。持ってきた作品を見て、「思ったより上手でびっくりした。家族で、満場一致で公式キャラクターにすることに決めた」と笑顔で語る。
キャラクターを考えた区内小学校に通う野口琉生くんは「いつもお世話になっているから、何か恩返しができないかなと考えて、休校中に『千寿葱』のキャラクターを作ってみた」と言う。キャラクターの名前は「千寿ねぎニャブロウ」。下町で猫が多い地域であることから、猫をモチーフにすることを決めた。宿場町だった歴史背景を意識して、武士の格好をしている。「頭のちょんまげを『千寿葱』にしてみた」とこだわりも。
現在は問屋内に「千寿ねぎニャブロウ」が貼られているが、今後は「千寿葱」を販売している「千寿食品館」(千住3)のPOPなどに登場予定。
「『千寿ねぎニャブロウ』がきっかけでより多くの地域の方々に『千寿葱』を知ってもらえたら」と専務で3代目の将信さんは語る。「ほっこりする『千寿ねぎニャブロウ』を通じて子どもたちにも『千寿葱』を身近に感じて好きになってもらい食育につながれば」とほほ笑む。
営業時間は7時~11時(11月~4月は13時まで)と17時前後。水曜・日曜・祝日定休。